ホームページを持っているのに問い合わせが来ない、検索順位がなかなか上がらない——そんなお悩みを抱える先生に、まず確認していただきたいことがあります。先生の事務所のホームページ、スマートフォンで開いたとき、すぐに表示されますか?
実はページが表示されるまでの速さ(これを「ページ表示速度」と呼びます)は、Googleの検索順位と無関係ではありません。コンテンツをいくら充実させても、ページが遅ければ来訪者はあっさり別のサイトへ去ってしまいます。この記事では、表示速度がなぜSEO(検索エンジン最適化)に関わるのか、そして専門的な知識がなくても取り組める改善の手順を、できるだけわかりやすくお伝えします。
なぜ「遅いページ」は嫌われるのか
まず、利用者の行動から考えてみましょう。
Googleの調査によると、ページの読み込みにかかる時間が1秒から3秒に増えると、ユーザーの離脱率(ページを見ずに閉じてしまう割合)が約32%上昇するとされています。たった2秒の差でページを離れる人が3割以上も増えるわけです。
さらに踏み込んだデータもあります。表示速度が1秒→5秒まで遅くなると離脱率は90%増加、6秒では106%増加、10秒になると123%まで増加するというレポートもあります。また、モバイルページで表示に3秒以上かかると53%のユーザーが離脱するという結果も出ています。
税理士事務所のホームページで考えると、「相続のことで相談したい」と検索して先生のページを訪れた相続人が、ページが開くのを待ちきれずそのまま別の事務所のサイトへ移ってしまう——というシーンが現実に起きています。
ある調査では、ウェブサイト・アプリから離脱した理由として「ページが表示されるまでに時間がかかりすぎた」が第1位で69.5%に上ったという結果もあります。「遅さ」は離脱の最大の原因なのです。
GoogleはなぜページスピードをSEOの指標にしているのか
ここで少し、Googleの考え方に触れておきます。
Googleは2018年1月に「スピードアップデート」を導入し、サイトの表示速度が検索順位に影響することを公式に明言しました。それ以降、表示速度は検索ランキングを決める要素のひとつに組み込まれています。
さらに2020年には「コアウェブバイタル(Core Web Vitals)」という新しい指標が導入されました。これはウェブページのユーザー体験を数値で測るための基準で、2024年3月には、それまでの指標FIDに代わって「INP(Interaction to Next Paint)」が正式に採用されるなど、現在も進化を続けています。
コアウェブバイタルは現在、主に3つの指標で評価されます。
・LCP(エルシーピー):ページを開いてから、一番大きなコンテンツ(タイトル画像やメイン見出しなど)が表示されるまでの時間。2.5秒以内が「良好」とされています。
・INP(アイエヌピー):ボタンやリンクをクリックしてから画面が反応するまでの速さ。200ミリ秒以内が目標です。
・CLS(シーエルエス):ページ読み込み中に文字や画像が突然ずれてしまう現象の大きさ。
0.1未満が良好とされています。
表示速度はユーザビリティにも直結し、離脱率やコンバージョン率(問い合わせや資料請求などの成果)に大きな影響を与えるため、SEOに限らずウェブサイト全体の成果を左右します。
一方で、過度に不安になる必要はありません。Googleの公式見解では、表示速度の影響を受けるのはユーザーに「本当に遅い体験を提供しているページ」に限られ、ごくわずかな割合のクエリにしか影響しないとされています。ただし、それを「だから気にしなくていい」と解釈するのは危険です。ページが遅いとSEO以前に、大切な相談者様が去ってしまうからです。
今すぐ確認できる!表示速度のチェック方法
では、先生の事務所のホームページは今どのくらいの速さなのでしょうか。それを調べるのに最適な無料ツールが「PageSpeed Insights(ページスピードインサイツ)」です。
PageSpeed InsightsはGoogleが無料で提供するページ表示速度を測定するためのツールで、使い方は簡単で入力しやすく、改善方法も提示してくれます。
使い方はとてもシンプルです。Googleで「PageSpeed Insights」と検索してページを開き、調べたいホームページのURL(例:https://○○事務所.jp)を入力して分析ボタンを押すだけ。しばらくするとスコアが0〜100の数値で表示され、どこを直せばよいかも具体的に教えてくれます。スコアは赤(要改善)・橙(改善推奨)・緑(良好)の3色で表示されます。まずは赤の項目から順番に目を向けてみてください。
スマートフォンからアクセスする人が多い税理士事務所のホームページでは、「モバイル」スコアを特に重視することをおすすめします。Web Almanac 2024のデータによると、モバイルでのLCP合格率は59%で、3指標の中で最もスコアが低く、多くのサイトにとって最大のボトルネックとなっています。
表示速度を遅くする主な原因と、非エンジニアでもできる改善策
表示が遅くなる原因はさまざまありますが、税理士事務所のホームページでよく見かけるのは、画像のデータ量が大きすぎるケースです。
スタッフ写真や事務所の外観写真をそのままカメラで撮ったデータをアップロードしていませんか?スマートフォンで撮影した写真は1枚で数MBを超えることも珍しくなく、それがいくつも並ぶとページの読み込みがどんどん重くなります。
表示速度が低下する主な原因として、掲載している画像・動画の容量が大きいことが挙げられます。不要な画像・動画の削除やファイルの圧縮・リサイズなどを行うことで、表示速度を改善することが可能です。
「Squoosh(スクオッシュ)」や「TinyPNG(タイニーピング)」といった無料のオンラインツールを使えば、画質をほとんど損なわずに画像ファイルを数分の1以下に圧縮できます。専門的なプログラミング知識は一切不要で、ブラウザ上で画像をドラッグ&ドロップするだけです。
もうひとつ確認してほしいのが、WordPressを使っている場合のプラグイン(追加機能)の数です。便利だからといってプラグインを入れすぎると、ページを開くたびに多くの処理が走り、表示が重くなります。使っていないプラグインは思い切って削除することも、立派な高速化対策になります。
「コンテンツが良ければ速さは関係ない」は本当か?
ここまで読んで、「うちのホームページはコンテンツで勝負しているから速さはいいや」と思われた先生もいるかもしれません。
仮に全く同じコンテンツを掲載したサイトが2つあった場合、ページの表示速度が速く、ユーザビリティの高いサイトの方が上位表示されるとされています。コンテンツの質が同じなら、速いほうが有利になるわけです。
それだけではありません。表示速度はSEOだけでなく、訪問者の「この事務所、信頼できそうだ」という第一印象にも影響します。表示速度が遅いというネガティブな経験は、速いというポジティブな経験よりも記憶に残りやすい傾向があります。遅いことのみに焦点が当たりやすく、ブランドへの信頼低下につながる可能性があります。
士業のホームページは「信頼感」を伝えるメディアでもあります。開いた瞬間の体験が悪ければ、どれほど充実した内容があっても読んでもらえません。
まとめ
ここまでお伝えしてきた内容を整理します。
・ページ表示速度が1秒から3秒に遅くなるだけで、離脱率が約32%上昇するというデータがある
・Googleは2018年の「スピードアップデート」以降、表示速度を検索順位のランキング要素に含めている
・コアウェブバイタル(LCP・INP・CLS)はGoogleが重視するユーザー体験の指標で、2024年にINPへの移行が完了した
・PageSpeed Insightsを使えば無料で自分のサイトのスコアを確認できる
・非エンジニアでも「画像の圧縮」「不要プラグインの削除」から始められる
今日からできるアクションはひとつだけ選ぶとすれば、まず「PageSpeed Insights」で先生の事務所のホームページを計測してみることです。スコアを見て、赤い項目が出ていたら、それが改善の出発点です。難しく考える必要はなく、一歩ずつ取り組んでいくことが、長い目で見て集客につながっていきます。
よくある質問(FAQ)
Q1. PageSpeed Insightsのスコアは何点以上を目指せばよいですか?
一般的に、75〜100点が「良好」とされています。ただし、スコアはあくまでも目安のひとつです。完璧な100点を追い求めるよりも、現在スコアが赤(49点以下)や橙(50〜74点)になっている項目を順番に改善していく姿勢で取り組むのが現実的です。まずは「モバイル」のスコアを確認することから始めてみてください。
Q2. ホームページを外注している場合、速度改善はどうすればよいですか?
制作会社や担当者に「PageSpeed Insightsのスコアを改善してほしい」と依頼するところから始めましょう。その際、「どの項目が赤く表示されているか」を画面キャプチャで共有すると話が早いです。改善対応が有償になる場合もありますが、費用対効果を考えると、見込み相談者の離脱を防ぐための投資として価値があるケースが多いです。
Q3. 表示速度を改善すれば、すぐに検索順位が上がりますか?
表示速度を改善しても、すぐに順位が変わるわけではありません。ページの読み込みを速くしただけで検索順位が直接上がるわけではなく、表示速度の改善はテクニカルSEOの基本施策として取り組むべき項目です。コンテンツの質・被リンク・更新頻度など複数の要因が重なって順位が決まるため、表示速度の改善は「土台を整える作業」と捉えるのがよいでしょう。取り組んでから効果が数値に表れるまで、数週間から1か月程度かかることも念頭に置いておくと焦りが少なくなります。
【著者プロフィール】太田亮児(おおたりょうじ)|合資会社オオタキカク 代表
税理士・会計事務所の営業、マーケティング支援を行う。起業前は東京都内にある税理士法人に勤務してマーケティング業務を専任で手掛けた。2005年にオオタキカクを設立して独立。税理士事務所の個性を活かし各事務所の強みを磨き上げオーダーメイド式でマーケティングの仕組みを作り上げるサポートを行う。2010年に「税理士・会計事務所の儲かるしかけ」を同文館出版より出版し、税理士業界に特化したサービスを展開している。税理士向けの専門紙である税理士新聞(NP通信社発行)への連載記事を手掛けていたこともある。