ホームページを作っただけでは、見込み客には届かない
ホームページを開設したものの、問い合わせが来ない。そんな状況に心当たりはないでしょうか。私がご相談を受ける税理士先生の多くが、最初にこの壁にぶつかります。原因のひとつは、「地域で税理士を探している人」に、先生の事務所が検索結果で見えていないことです。
日本税理士会連合会のデータによると、2026年4月末時点での税理士の登録者数は82,315人とされています。これだけの数の税理士が全国に存在し、それぞれがホームページを持つ時代に、ただページを公開するだけでは埋もれてしまいます。
そこで重要になるのが「ローカルSEO」という考え方です。ローカルSEOとは、「地域名×業種」で検索されたときに、自分の事務所を上位に表示させるための施策のことを指します。「渋谷 税理士」「大阪 税理士」といったキーワードで、先生の事務所が検索結果の目立つ位置に出てくれば、地域の見込み客から問い合わせを得やすくなります。
難しく聞こえるかもしれませんが、打つべき手は意外なほど具体的です。この記事では、税理士事務所がローカルSEOで成果を上げるために取り組むべき施策を、実践的な順序で解説していきます。
なぜ「地域名+税理士」の検索が重要なのか
税理士や会計事務所を探すユーザーの多くは、「税理士 〇〇市」「会計事務所 〇〇区」のように地域名を含めて検索します。顧問先様となる中小企業の経営者や個人事業主は、事務所を選ぶとき、まず「近くにあるかどうか」を重視します。毎月の決算業務、急な税務相談、年に一度の確定申告。対面でのコミュニケーションを求める相談者様にとって、地理的なアクセスのしやすさは、それだけ切実な問題なのです。
「いままさに税理士を探している」というお客様は、自宅や職場から近いエリア内で税理士事務所を探します。そのため、地域名を含むキーワードで上位表示できると、お問い合わせに直結する可能性が高いのです。
加えて、地域名での検索は「今すぐ依頼したい」という明確な意図を持つユーザーが多い傾向があります。「横浜市 税理士」と検索した人は、ただ情報を探しているだけではなく、具体的に相談できる事務所を探している「契約に近い見込み顧客」と言えます。こうしたキーワードへの対策は、アクセス数よりも問い合わせ数に直結するという意味で、税理士先生にとって最も費用対効果の高い施策のひとつです。
Googleビジネスプロフィールの整備が出発点になる
ローカルSEOを語るうえで、Googleビジネスプロフィール(以下、GBP)の存在は欠かせません。GBPとは、Googleが提供する無料のサービスであり、ローカルビジネスが自社の情報をGoogleの検索エンジンとマップに表示するために利用できるプラットフォームです。事務所名、住所、電話番号、営業時間といった基本情報をここに登録することで、Google検索やGoogleマップ上に事務所情報が表示されるようになります。
Googleのローカル検索結果は、主に「関連性」「距離」「人気度」に基づいて表示されます。このうち「距離」は検索ユーザーの現在地によって決まるため、先生側でコントロールできる部分ではありません。一方で「関連性」と「人気度」は、GBPの充実度や口コミの数によって大きく左右されます。
特に重要なのが、NAP情報と呼ばれる「事務所名(Name)・住所(Address)・電話番号(Phone)」の正確な登録と、他のウェブサイトとの一貫性です。情報が少しでも異なるとGoogleが「別の店舗」と誤認識し、検索表示の順位に悪影響を与える可能性があります。
登録完了後は、定期的な情報更新が非常に重要です。営業時間の変更、新サービスの追加など、常に最新で正確な情報を保つことで、ユーザーにとって有益なプロフィールを維持できます。GBPは「一度登録すれば終わり」ではなく、継続的に育てていくものとして位置づけてください。
ホームページのコンテンツで「地域との関連性」を高める方法
ホームページのコンテンツで「地域との関連性」を高める方法
GBPを整えることと並行して、ホームページそのものにも地域との関連性を持たせる必要があります。「GBPがあれば、公式サイトは不要」という言説をたびたび見かけますが、公式ウェブサイトでの情報発信や仕組みはローカル検索のランキングや集客にポジティブな影響をもたらします。
具体的には、事務所の所在地・電話番号・アクセス地図を「コンタクト」ページや「事務所概要」ページに正確に掲載することが基本です。さらに踏み込んで効果的なのは、地域に特化したページを設けることです。複数のエリアで集客したい場合は、エリア別のページを作成することも有効です。「〇〇市の税理士」「〇〇区で会社設立をお考えの方へ」といったページを用意し、地域特有のニーズや事例を盛り込むことで、地域密着型の事務所としてアピールできます。
私が実際にご相談いただいた事例では、「〇〇市 相続税 税理士」という複合キーワードで地域ページを作成し、相続案件の問い合わせが安定して入るようになったケースがあります。税理士事務所のSEO対策において、地域名と同じくらい検索キーワードとして重要なのが、「地域名+業務分野」という組み合わせです。相続税・創業融資・法人決算など、先生の専門性と地域名を掛け合わせることで、競合の少ないキーワードで確実に成果を出せる可能性が高まります。
口コミ(レビュー)こそが、信頼と検索順位を同時に高める
口コミ数の増加や高評価の獲得は、ローカル検索結果における「知名度」に直結します。税理士業は顧問先様との長期的な信頼関係が軸にある仕事です。その信頼の蓄積が、口コミというかたちでオンライン上にも反映されると、検索順位と新規相談者様の安心感を同時に高めることができます。
とはいえ、顧問先様に「口コミを書いてください」と直接お願いするのは、心理的なハードルを感じる先生も多いのではないでしょうか。私がお勧めしているのは、顧問先様との会話の中で「Googleにご感想を残していただけると、私どもの励みになります」と自然に伝えるやり方です。正式な依頼文を別途送るよりも、関係性の中で生まれた一言のほうが、相手にも伝わりやすいと感じています。
口コミを受け取ったら、必ず返信することも重要です。ローカルSEOで上位表示されるためには、Googleビジネスプロフィールを最適化するだけでなく、ユーザーのニーズに合った関連性の高いコンテンツを作成することが重要です。返信もGoogleに「このビジネスはアクティブに運用されている」というシグナルを送る行動になります。
まとめ:今日から始めるローカルSEO実践チェックリスト
ローカルSEOは、一夜にして順位が上がるものではありません。しかし、正しい施策を着実に積み重ねることで、一度上位表示されれば、長期的に安定したアクセスを獲得できる可能性があります。広告費に頼らず、地域の見込み客が自然に訪れる仕組みをつくることが、税理士先生の事務所経営の安定につながります。
以下に、まず取り組むべきアクションをまとめます。
・Googleビジネスプロフィールに事務所名・住所・電話番号・営業時間を正確に登録し、ホームページのコンタクトページと情報を一致させる
・ホームページに「地域名+専門業務」をテーマにしたページを1ページ作成する(例:「〇〇市の相続税申告に対応する税理士」)
・既存の顧問先様に、Googleビジネスプロフィールへの口コミ投稿をやわらかくお願いする
・Google Search Console(無料のアクセス解析ツール)を設定し、どのキーワードで訪問者が来ているかを月1回確認する
小さな一歩でも、先週より確実に前進できます。先生の事務所がいる地域で、必要としている方に見つけてもらえる体制を、今日から少しずつ整えていきましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1. Googleビジネスプロフィールは、税理士事務所のような士業でも登録できますか?
はい、登録できます。実店舗や窓口を持つビジネスだけでなく、相談対応を行う専門職の事務所も対象です。登録自体は無料で、Googleアカウントがあれば申し込み手続きを開始できます。住所確認のためにGoogleからはがきが届くケースがありますが、手順に従って完了させてください。
Q2. ローカルSEOの効果が出るまで、どのくらいの期間がかかりますか?
一般的に、GBPの整備や地域ページの作成から効果が現れるまでには3〜6ヶ月程度かかることが多いと言われています。ただし、競合が少ない地方都市の場合はより早く反応が出るケースもあります。月1回はGoogle Search ConsoleやGBPのインサイト機能(閲覧数や電話クリック数を確認できる機能)でデータを確認し、改善を続けることが重要です。
Q3. 地域名のページは、市区町村単位で作るべきでしょうか、都道府県単位でしょうか?
先生の事務所が実際に対応できる商圏に合わせて設定するのがベストです。都市部であれば区・市区町村単位、地方であれば市や地域エリア単位が現実的です。最初から広げすぎず、事務所の所在地に最も近い1〜2エリアに絞って質の高いページを作ることから始めることをお勧めします。
【著者プロフィール】太田亮児(おおたりょうじ)|合資会社オオタキカク 代表
税理士・会計事務所の営業、マーケティング支援を行う。起業前は東京都内にある税理士法人に勤務してマーケティング業務を専任で手掛けた。2005年にオオタキカクを設立して独立。税理士事務所の個性を活かし各事務所の強みを磨き上げオーダーメイド式でマーケティングの仕組みを作り上げるサポートを行う。2010年に「税理士・会計事務所の儲かるしかけ」を同文館出版より出版し、税理士業界に特化したサービスを展開している。税理士向けの専門紙である税理士新聞(NP通信社発行)への連載記事を手掛けていたこともある。